地域薬学ケア専門薬剤師をゼロから最短で目指す人が第30回日本医療薬学会年会で聴講すべきたった1つのテーマ

地域薬学ケア専門薬剤師 専門薬剤師

この記事は、日本医療薬学会が新たに設けた「地域薬学ケア専門薬剤師」の認定をゼロから最短で目指す人を対象に構成しています。
「ゼロ」から「最短」を目指していない人にも、学会参加の意識付けとして参考になる内容にはなっています。

2020年10月24日~2020年11月1日に開催される第30回日本医療薬学会年会で、「地域薬学ケア専門薬剤師」の認定をゼロから最短で目指す人が聞くべきテーマを「1つ」だけに絞ってお示しします。

地域薬学ケア専門薬剤師について

地域薬学ケア専門薬剤師については、これまで何度か取り上げていますが、保険薬局薬剤師にしか取得できない特徴があります。

地域薬学ケア専門薬剤師の認定は2020年度からとなっており、認定開始初期の「経過措置」に加えて、昨今のいろいろな事情から、2020年度の第1回申請については多くの要件が緩和されており、「暫定」ではあっても専門薬剤師を取得できる良い機会にはなっています。

(当面は「がん領域」のみですが)今後の専門医療機関連携薬局の指定に繋がると思われる重要な資格ですので、暫定要件を満たされる先生には、ぜひ取得をご検討いただきたい専門薬剤師資格です。

「地域薬学ケア専門薬剤師」の認定をゼロから最短で目指す

地域薬学ケア専門薬剤師認定要件の「経過措置」と「緩和措置」の内容については、こちらをご参照ください。

これらを踏まえて、なりゆき薬科大学では、2020年度の第1回認定で専門薬剤師取得にチャレンジしてみることをおススメしています。

そのなかで、今回はまず、以下の要件をクリアするために、第30回日本医療薬学会年会に参加しましょう!とお伝えしています。

  1. 本学会の年会に1回以上参加したこと(要件緩和なし)

ゼロスタート(これまで学会に入っていなかったり、年会に参加したことがない場合)で、この要件を満たすためには、直近に開催される第30回日本医療薬学会年会への参加が事実上必須になります。

幸いにして、今年度は1週間のWEB開催(オンデマンド配信)ですので、休暇や出張の申請をしなくても参加が可能です。

事前申し込みは7月30日に一度終了していますが、今後受付が開始される「オンライン参加登録」でも、参加登録費は同額ですので心配はいりません。

とはいえ、10,000円(会員)は決して安くありません。
ついつい元を取るぞーと、いろいろなセッションを聞こうと意気込む方も多いかもしれませんが、自分の苦い経験からすると、聞くことが目的になってしまって、内容が全然抑えられていなかったり、いわゆる「おなかいっぱい」状態になって、知識の消化不良を起こしてしまうことがあります。お恥ずかしながら筆者はありました。

そんな理由から、聴講するセッションはできるだけ絞ったほうがいいです。
では、何を聞いたらよいか。

「地域薬学ケア専門薬剤師」の認定をゼロから最短で目指すために聞くべき「テーマ」を絞りましょう。

おすすめするのはたった1つのテーマです。

だった1つのテーマとは、ずばり「症例報告」

だった1つのテーマとは、ずばり「症例報告」です。
ただ、「症例報告」というセッションはほぼなくて、そういう内容を取り扱っている演題を絞り込んでおきましょう(準備しておきましょう)ということです。

なぜ、これをおすすめするかというと、地域薬学ケア専門薬剤師認定要件のこの項目があるからです。

  1. 認定開始日1年以内に研究発表あるいは論文の条件のいずれか一方を満たすこと(2020年度のみ特例)

この要件は、本来は申請時にすでに満たしていないといけないものですが、学会の中止や延期が相次いでいたこともあり、初回申請のみ事後要件となっています。

つまり、地域薬学ケア専門薬剤師の認定を受けたあかつきには、1年以内に学会発表か論文(受理)が行われないといけないことになります。

経験のある方は、それほど大きなハードルではないと思いますが、ゼロからの人には、なかなかの関門です。

筆者は、この要件を満たすために、「症例報告」の学会発表をするのが近道、平たく言うと「手っ取り早い」と考えています。

今年の申請に間に合って、無事に地域薬学ケア専門薬剤師(暫定)となったあとの必須の学会発表は「症例報告」にしましょう。

ゼロからの場合、臨床研究は関門が多い

「症例報告」をおすすめする理由は、いわゆる「ふつうの研究発表」で求められる以下のスキルや手続きが不要だからです。

  • 研究デザイン、統計解析
  • 研究倫理審査(人を対象とする医学系研究に関する倫理指針)
  • 複数(それも大人数)の患者情報取り扱い

現実に発表されている演題のすべてが、これらを正しく理解して運用できているのか?については疑問ですが、だからといって、テキトーな研究もどきを発表するのは、専門薬剤師にふさわしい行動ではありません。

なので今回は、これらをスキップできる「症例報告」をおすすめするのです。

二番煎じでも問題ない

また、これもときどき誤解されることなのですが、「誰かが発表した内容と同じことをするのはご法度!?」ということはありません。

「すでにこういう報告がある」ことをしっかりと引用したうえで、改めて自分が同様の発表をするのか理由を示せば、いわゆる二番煎じでも、問題ありません。

同じことを別の人が発表するというのは、「再現性」という、新たな価値を生み出しているからです。

つまり、今年発表された症例報告をテーマをチェックして、来年の自分の発表テーマにつなげる。

なんなら、パクリネタを探す。

これが、学会の一般演題で「症例報告」を聴講することの目的になります。

今年の学会だけで、100演題くらいはありそう

実際に公表されている、演題採択リストをざっくり数えてみましたが、

  • 「一例」のタイトルがつく演題 46演題
  • 「症例」のタイトルがつく演題 64演題

それぞれありました。

本当にざっくりなので、正確ではありません。
異なる意味で使用されていることもありますし、演題取り消しとなる場合ものあります。

実際に公表されている、演題採択ファイルから一覧を作成してみましたので、参考にしてください。

jsphcs2020_presentation(Google スプレッドシート)

このファイルは、「一例(1例)」「症例」を検索するためだけに急ぎ作成したものなので、OCRで読みきれいていないものは「?」のままになっています。
正確な情報は、学会のホームページにてPDFファイルをご参照ください。

独断と偏見で「この辺の演題はいいかも?」と思うものには、セルに着色してありますのでそちらも参考にしてください。

もちろん、これら全部の発表(ポスタースライドや動画)をカバーする必要はありません。

抄録についてはできれば全て通読し、興味のある内容や、自分の環境でもいそうなもの、ありそうなものを20~30演題くらいにまで絞っておくといいでしょう。

おすすめを症例報告に「絞る」理由

来年の学会発表のことだけにコミットするならば、もっとライトなテーマにすることもできないことではありません。

「○○の××に対する取り組み」的なやつです。

実際に、多くのそういった演題が出されています。

筆者が、このような演題での発表をあまりおすすめしないのは、この後で触れる「新規性」と「再現性」をしっかりと示そうとすると、それなりの解析や理論武装が必要になるからです。

さらに重要なこととして、5年後までにこの課題が残されます。

  1. 症例報告50症例(4領域以上)を提出すること(経過措置では全面免除)

2020年8月13日時点では、記載例や記載に関するQ&Aが公表されていませんが、学会というところが「症例」をどのような文化で取り扱っているか?
をできるだけ早くから感じてもらう方が、のちのち有利になると考えます。

症例報告の何をみるのか?

これらの演題をどういう視点で、聴講すればよいか、がもちろん気になりますよね。

というか、わからない、という方もいらっしゃると思います。

この疑問に対する唯一無二の回答はありませんが、おすすめする以上は、
「筆者ならこういう感じで聞こうとする」
という考えはあるので、後日公開したいと思います。

学会発表を重圧に感じる必要はない

そんな、学会発表するような特殊なことなんて早々ないよー

と、はじめは思ったかもしれませんが、実際の演題リストを見てどうでしたか?

「え、それって普通に添付文書に書いてあることじゃん!」

なんてことがタイトルになっているものもあったと思います。

未知、
とか、
新規性、
とか、
特殊性・特異性

などが、必要条件ですが、これは参加者(視聴者)がどう思うか、であり、自分が「伝えるべきこと」であれば、これらはすべてクリアされます。

例えば、

この副作用は、こんなタイミングで、こんな症状が発見の契機になることがあるのか!

といったことがあれば、それは参加者にとっての未知の情報であり、新規性に富む内容になります。

自信をもっていきましょう。

この記事の執筆者

なりゆき専門薬剤師(諸般事情により匿名)
現役の病院薬剤師(勤務歴20年)
複数の認定薬剤師・専門薬剤師を取得、活動歴あり