新制度:地域薬学ケア専門薬剤師のスタートアップ情報が開示【追記・修正あり】

地域薬学ケア専門薬剤師

新制度:地域薬学ケア専門薬剤師のスタートアップ情報が開示

2020年5月25日付で、日本医療薬学会の新たな専門薬剤師制度「地域薬学ケア専門薬剤師」のスタートアップ情報が開示されました。

「新専門薬剤師制度の発足にかかる全国研修会 ~地域薬学ケア専門薬剤師制度の運用~」に係るハンドアウト公開のお知らせ

この専門薬剤師制度に関して初めてお目にかかる方もいらっしゃると思うので、くどいようですがそもそもの説明です。

地域薬学ケア専門薬剤師とは

地域薬学ケア専門薬剤師とは、幅広い領域の薬物療法に関する高度な知識と技能を用い、地域包括ケアなどの地域医療・ 介護等を担う他職種と協働し薬物療法を実践することにより、 患者に最大限の利益をもたらすとともに研究活動を実践出来る者として、本学会が実施する専門薬剤師認定審査に合格した者をいう。

ざっくり言い直しますと、これまでの専門薬剤師制度は、病院薬剤師や教育的立場の方が比較的取りやすい制度でした。

保険薬局における薬学管理の重要性を評価できるよう、主に保険薬局の薬剤師を対象として創設された(と思われる)のがこの「地域薬学ケア専門薬剤師」です。

この新しい専門薬剤師制度は期待を膨らませつつ、なかなか情報が開示されない状況が続いておりましたが、ついに一部情報が解禁になりました。

重要:追記および訂正

地域薬学ケア専門薬剤師認定制度規程には、資格取得の要件として挙げられていませんが、地域薬学ケア専門薬剤師認定制度規程細則には、以下の記載があります。

薬局での実務経験が1年以上あり、申請時に薬局に勤務していること

そのため、本制度は薬局勤務の薬剤師さんだけが取得可能なものになっています。
お詫びして訂正言いたします。

最大のポイントは地域薬学ケア専門薬剤師の暫定認定条件

これまでも、新たな制度発足時には条件を満たすためのさまざまな体制が整っていないこともあるため、暫定条件としてやや緩和される傾向にありました。

そして、今回も当面の条件緩和が示されています。

まずは、本来の条件(規則に記載されているもの)です。

  1. 日本国の薬剤師免許を有し、薬剤師として優れた人格と見識を備えていること。
  2. 薬剤師としての実務経験を5年以上有すること。
  3. 申請時において、引き続き5年以上継続して本学会会員であること。
  4. 「日本薬剤師研修センター研修認定薬剤師」、「日本病院薬剤師会日病薬病院薬学認定薬剤 師」、 「日本薬剤師会・生涯学習支援システム(JPALS)クリニカルラダー5以上」、その 他本学会が認めた認定制度による認定薬剤師のいずれかの認定を受けていること。
  5. 本学会が認定する「地域薬学ケア専門薬剤師研修施設」において、本学会の定めた研修コアカ リキュラム(カンファレンスへの参加を含む)に従って、地域薬学ケアに関する5年以上の研 修歴を有すること。
  6. 別に定めるクレジットを5年で50単位以上取得していること。
  7. 専門薬剤師認定取得のための薬物療法集中講義に1回以上参加したこと。
  8. 本学会の年会に1回以上参加したこと。
  9. 自ら実施した5年の薬学的管理を行った症例報告50症例(4領域以上の疾患)を提出すること。
  10. 以下の研究活動のうち、発表あるいは論文の条件のどちらか一方を満たすこと。 学会発表:医療薬学に関する全国学会あるいは国際学会での発表が2回以上あること。本学会が主 催する年会において本人が筆頭発表者となった発表を含んでいること。 論文:本人が筆頭著者である医療薬学に関する学術論文を1報以上有すること。学術論文は、 国際 的あるいは全国的学会誌・学術雑誌に複数査読制による審査を経て掲載された医療 薬学に 関する学術論文あるいは症例報告であること(編集委員以外の複数の専門家による査読を経 ていない論文は、本条の対象外)。
  11. 本学会が実施する専門薬剤師認定試験に合格すること。

これ、改めて見るとやはり、なかなかなの難易度ですよね。

指定の研修機関で研修しないといけないし、

指定の集中講義受けないといけないし、

症例報告が50例も義務付けられているし、

学会発表と論文のいずれもが求められているし

試験受けないといけないし

と、やはりハードルが高めになっています。

そこに、先ほどから触れている制度開始時の暫定条件(条件の緩和)が示されました。

地域薬学ケア専門薬剤師等の認定に係る過渡的措置

2020年度~2024年度まで「地域薬学ケア専門薬剤師」の認定申請に限り、 次の過渡的措置を講する(一部修正)。

まず、暫定要件が適応される期間が5年間となりました。

これで、これからいろいろ準備しても、暫定要件で申請できそうです。

地域薬学ケア専門薬剤師の暫定認定の要件

地域薬学ケア専門薬剤師の暫定認定を申請する場合、認定制度規程のに係る要件は以下の通り取り扱うこととする。

要件(3)については、申請時に本学会会員であれば良い。
要件(5)については、不要とする。
要件(6)については、講習会の履修単位数を20単位とする。副領域を標榜する場合 には、その領域の集中講義を履修し、その証明書を提出すること。
要件(9)については、不要とする。
要件(10)については、学会発表1回(筆頭)または論文報告(筆頭)1報があればよい。 副領域を標榜する場合には、副領域の学会発表または論文報告とする。
要件(11)については、不要とする。
過渡的措置により認定された地域薬学ケア専門薬剤師の認定期間は5年である。

ず、ずいぶんと要件の緩和があります。

難しい文言が多く並んでいてわかりにくいと思いますので、先ほど示した本来の条件11個を筆者の感覚で修正してみました。

  1. 日本国の薬剤師免許を有し、薬剤師として優れた人格と見識を備えていること。
  2. 薬剤師としての実務経験を5年以上有すること。
  3. 申請時において、本学会会員であること。→これから入ればOK
  4. 「日本薬剤師研修センター研修認定薬剤師」、「日本病院薬剤師会日病薬病院薬学認定薬剤師」、 「日本薬剤師会・生涯学習支援システム(JPALS)クリニカルラダー5以上」、その 他本学会が認めた認定制度による認定薬剤師のいずれかの認定を受けていること。
  5. なし→研修歴不要
  6. 別に定めるクレジットを5年で20単位以上取得していること。
  7. 専門薬剤師認定取得のための薬物療法集中講義に1回以上参加したこと。
  8. 本学会の年会に1回以上参加したこと。
  9. なし→症例報告不要
  10. 以下の研究活動のうち、発表あるいは論文の条件のいずれか一方を満たすこと。
    学会発表:医療薬学に関する全国学会あるいは国際学会での発表(筆頭演者)が1回以上あること。
    論文:本人が筆頭著者である医療薬学に関する学術論文を1報以上有すること。学術論文は、 国際的あるいは全国的学会誌・学術雑誌に複数査読制による審査を経て掲載された医療薬学に関する学術論文あるいは症例報告であること(編集委員以外の複数の専門家による査読を経ていない論文は、本条の対象外)。
  11. なし→試験不要(おそらく試験そのものを実施しない?)

なんか、一気に楽勝モードな感じしませんか?

指定の研修機関で研修する必要ないし、

指定の集中講義受ける必要ないし、

症例報告しなくてもいいし、

学会発表だけ1回してればいいし、

試験すらない。

わけです。

開示されている資料では、しっかりと確認できなかったのですが、7.専門薬剤師認定取得のための薬物療法集中講義に1回以上参加したこと。についても、求めないようにも読み取れる記述があります(不確実だったので、ここでは要件に残してあります)。

医療薬学会、相当ハードルを下げてきました

これまでの専門薬剤師制度発足時や移管(引継ぎ)の時にも暫定要件が設定されてきましたが、これほどまでではなかったと思います。

しかもこの要件緩和(暫定要件)が、5年間も継続するというのが、また大きなニュースです。「なりふり構わず、とにかく地域薬学ケア専門薬剤師を量産しないといけない」そんなメッセージすら感じとれます。

もちろん、認定後の5年間で課せられる更新の要件は本来のものよりも厳しく設定されているのですが、やらなければいけない環境になると、人間、力を発揮出来るものです。

保険薬局にだけ門戸が開かれていないわけではない!

「地域薬学ケア」というのは、確かに保険薬局の薬剤師さんにぜひ取得してほしいという思いがあります。

学術的に成熟していることを社会に示す方法として、専門薬剤師制度の運用は効果的だからです。

しかし、勤務している職場の業種形態については縛りはありません。

現在の暫定要件であれば、病院勤務の筆者もとれるなあ~と思いましたし。

「専門薬剤師」に対する思い入れという点では病院薬剤師の方々にはそれなりのものがあるように感じていますので、相当数の病院薬剤師の先生が申請の準備をされるのではないかと思います。

それは決して悪いことではないんです。今後この専門薬剤師制度で肝となる「基幹研修施設」をたくさん作る土台として、病院薬剤師の皆さんにもぜひ認定は取得していただきたいと日本医療薬学会考えているはずですので(筆者の憶測です)

しかし、それでも、この新領域は保険薬局勤務の薬剤師さんを中心に育てていって欲しいと思っていますいかなければなりません

研修指導隊の構築に関しても、まだ病院優位に設計されていますが、いつからはそれも見直しされるよう、この絶好の機会を逃すことなく、全力でつかみに行って欲しいと願っていま。

重要:追記および訂正

こちらも、細則にある記載ですが、認定試験を受けなくてもいい(=免除される)ことがあります。

専門薬剤師認定試験の受験は、日本薬剤師研修センター主催薬剤師生涯学習達成度確認試験の合格者は、生涯学習達成度確認試験の合格証書のコピーの提出をもって免除することができる。

筆者自身は、生涯学習達成度確認試験の受験経験がないので、難易度等については何も言えません。ただし、合格証書のコピーがあるということは、すでに合格している場合を指しますので、試験を受けなくてもいいという状況は自分で作り出すことができます。

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この記事の執筆者

なりゆき専門薬剤師(諸般事情により匿名)
現役の病院薬剤師(勤務歴20年)
複数の認定薬剤師・専門薬剤師を取得、活動歴あり