地域薬学ケア専門薬剤師の認定要件がさらに緩和される(2020年限定):追記・修正あり

地域薬学ケア専門薬剤師 専門薬剤師

地域薬学ケア専門薬剤師は、日本医療薬学会があらたに創設した専門薬剤師制度です。

主に保険調剤薬局(Community Pharmacy)の薬剤師向けに創設したことを明らかにしています。これまでの「専門薬剤師」制度はほとんどが(結果として)病院薬剤師向けのものとなっていましたので、大きなターニングポイントになる可能性がありますし、そうしなければならないのかもしれません。

地域薬学ケア専門薬剤師の認定要件は、暫定的に緩和される予定である

今回の専門薬剤師制度創設の背景には薬機法の改正、専門医療機関連携薬局の認定開始が少なからず関係しているものと思います。

この新しい制度、昨年の秋ごろから、徐々に情報が開示されてきましたが、当面は暫定措置として、認定条件が緩和されることになっています。

この暫定措置は、制度立ち上げ初期の黎明期におけるものですが、今回さらに、新型コロナウイルス感染拡大による影響を加味した追加の救済策が公表されました。

2020年新型コロナ感染症拡大による影響下での追加緩和

2020年度 本学会専門薬剤師制度における新規認定申請の取扱いについて(第5報)

今回の救済策は、すべての専門薬剤師制度について、それぞれの対応が記載されており、完全一致ではないにせよ、各制度で似たような対応となっています。

なお、今回取り上げる地域薬学ケア専門薬剤師制度では、以下のような救済対応が示されています。

<上記より抜粋>
申請時には、20単位および学会発表あるいは論文報告を必ずしも必須の要件とせず、認定作業を行う。20単位が不足する場合、および学会発表あるいは論文報告が不足する場合は、認定開始日1年以内に不足分を提出すること。

地域薬学ケア専門薬剤師制度においては、もともと暫定措置に加えてさらに緩和されることになるので、正直なところ、大変「お得」な状況になります。

誤解を恐れずにいえば、バーゲンセール状態です。

前回の記事からも抜粋して、2020年に新規認定申請を行う場合の要件を確認してみたいと思います。

こちら、先出の記事に出した暫定措置の要件

  1. 日本国の薬剤師免許を有し、薬剤師として優れた人格と見識を備えていること。
  2. 薬剤師としての実務経験を5年以上有すること。
  3. 申請時において、本学会会員であること。→これから入ればOK
  4. 「日本薬剤師研修センター研修認定薬剤師」、「日本病院薬剤師会日病薬病院薬学認定薬剤師」、 「日本薬剤師会・生涯学習支援システム(JPALS)クリニカルラダー5以上」、その 他本学会が認めた認定制度による認定薬剤師のいずれかの認定を受けていること。
  5. なし→研修歴不要
  6. 別に定めるクレジットを5年で20単位以上取得していること。
  7. 専門薬剤師認定取得のための薬物療法集中講義に1回以上参加したこと。
  8. 本学会の年会に1回以上参加したこと。
  9. なし→症例報告不要
  10. 以下の研究活動のうち、発表あるいは論文の条件のいずれか一方を満たすこと(以下省略)
  11. なし→試験不要(おそらく試験そのものを実施しない?)

暫定措置+2020年救済措置=?

これが、今回の措置を受けて、さらにこうなります。

  1. 日本国の薬剤師免許を有し、薬剤師として優れた人格と見識を備えていること。
  2. 薬剤師としての実務経験を5年以上有すること。
  3. 申請時において、本学会会員であること。→これから入ればOK
  4. 「日本薬剤師研修センター研修認定薬剤師」、「日本病院薬剤師会日病薬病院薬学認定薬剤師」、 「日本薬剤師会・生涯学習支援システム(JPALS)クリニカルラダー5以上」、その 他本学会が認めた認定制度による認定薬剤師のいずれかの認定を受けていること。
  5. なし→研修歴不要
  6. 別に定めるクレジットを5年で20単位以上取得していること。
    → 足りなくてもOK。足りない分は来年カバーしてね。
  7. 専門薬剤師認定取得のための薬物療法集中講義に1回以上参加したこと。
    → 今後近いうちに開催(WEB配信)予定なので受講してね。
  8. 本学会の年会に1回以上参加したこと。
    → 第30回の年会に今から申し込めば間にあう。しかも、今回は1週間のWEB開催(仕事休んで出張する必要なし)
  9. なし→症例報告不要
  10. 以下の研究活動のうち、発表あるいは論文の条件のいずれか一方を満たすこと。→ とりあえず不問。来年のうちに何とかクリアしてね。
  11. なし→試験不要(おそらく試験そのものを実施しない?)

つまり、薬剤師になって5年の経験がある(=6年目以降)で、日本薬剤師研修センターの生涯研修認定薬剤師(G01)を取得していれば、2020年、地域薬学ケア専門薬剤師(暫定)が取得できます。

取れるときに取る、というのは立派な方針

もちろん、要件は先送りされただけで、もう何もしなくていいということではありませんが、目指している、目指そうとしていたのであれば、「取れる時に取る」というのは大事なことです。

いずれ、そのための努力をするのであれば、やらなければいけない状況になっていたほうが、馬力が出る、という人のほうが多いと思います。

追い込まれるプレッシャーが、とてつもなく不快になる人もいるので、だれしも・・・とまでは言えないのですが。

そうまでして、なぜ地域薬学ケア専門薬剤師 2020 年の取得をおススメするのか

焦って専門薬剤師を取得することに意義があるのか?という疑問もあろうかと思いますが、勤務されている薬局を、研修施設(連携)にするための要件を満たすことになり、早期に研修施設(連携)としての活動を開始できます。

もちろん、研修施設(基幹)との連携(マッチング)が前提ではありますが、この1年は結構大きいです。

バカにならない、研修施設要件

連携施設になるためには、誰かが専門薬剤師である必要があります。

そして、研修施設(連携)として、実際に研修を受けいれる場合、研修者1人ごとに費用が発生することになります。

今回、暫定でもなんでも専門薬剤師になっておけば、基幹病院にいる指導薬剤師の事実上の指導を、意見交換、情報交換という名目で、費用発生なく享受することができるかもしれないわけです。

専門薬剤師だと0円、非専門薬剤師だと72,000円

学会発表・論文の要件を後出しで満たせばOKなわけですから、今回だけの完全な特権になります。

2020年8月19日追記:
日本医療薬学会ホームページにて、2020年8月17日付に公表された「2020年度地域薬学ケア専門薬剤師研修施設調整依頼申請受付のお知らせ」を解釈すると、専門薬剤師(暫定)となる人は更新時までに研修5年を満たす必要があり、暫定認定と同時に研修が開始されないといけないようです。
研修の受け方は、自身の薬局が「連携施設」となるか、「基幹施設」に研修者として受け入れてもらうかになります。
ですので、上記のような「特権」構造はなくなってしまいました。

最も、そんなことは自力で何とでもなるから大丈夫、という方にはすっかり余計なお世話になってしまいました。

費用負担をどこが、あるいは誰が負担するかは、職場や上司の考え方にもよるわけですが、上記の通り「取れるときに取れるものを取る」ことで、自分にも職場にも恩恵を与えることができると思いますよ。

追記:重要事項の修正

地域薬学ケア専門薬剤師は保険薬局勤務薬剤師だけが申請できる(病院薬剤師は不可)

地域薬学ケア専門薬剤師の認定要件規程第4条の2というところに書かれているのですが、ここには、保険薬局の薬剤師であることは規定されていません。

なので、病院勤務でも取れるのかな?とよくよく見直してみたところ、細則に以下の記述がありました。

要件(2)については、薬局での実務経験が1年以上あり、申請時に薬局に勤務していること

本記事では、一部に病院薬剤師でも取得が可能ととれるかのような表現がありましたので、お詫びして訂正させていただきました。

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この記事の執筆者

なりゆき専門薬剤師(諸般事情により匿名)
現役の病院薬剤師(勤務歴20年)
複数の認定薬剤師・専門薬剤師を取得、活動歴あり