認定薬剤師の申請条件が何を言っているのかよくわからない方への解説【長文】

がん薬物療法認定薬剤師 認定薬剤師(領域)

認定薬剤師の申請条件に書かれている難解な日本語をわかりやすく解説します

先日、認定薬剤師取得に関する相談を受けたのですが、その際に、申請条件が正直よくわからないといわれました。
正しくその通りで、非常にわかりづらい表現をされています。日本語の理解力を試されているのかな?

ほかにもうちょっといい書き方があるだろうに、とさえ思うのですが、なにやらそういう書き方のフォーマットでもあるのでしょう。

そこで、今回は「がん薬物療法認定薬剤師申請条件」を例として、もう少しわかりやすく何が書いてあるのかを解説します。

なお、申請条件の原文はこちらで確認できます。

順番に解説していきます

人としての尊厳(笑)

(1)日本国の薬剤師免許を有し、薬剤師として優れた見識を備えていること。

あたりまえですね。
大前提としての建前です。
この項目に関する手続きは特にありません。

どの程度を「優れた見識」というのかは、個人の疑問としては思うところですが、示されていることもなく、当然ながらこの条件をクリアできずに取得できなかったという話は聞いたことがありません。

指定職能団体への所属要件

(2)薬剤師としての実務経験を3年以上有し、日本病院薬剤師会の会員であること。ただし、別に定める団体のいずれかの会員であればこれを満たす。

ここで求められていることは2つです。

薬剤師実務経験を3年以上(条件①)

これ過去には(といいますか、昨年まで)5年間が求められていました。
それが今回からは4年目の人からOKってことです。

実務経験要件に変更についてはこちらも参考にしてください。

もう一つが、下のどれかの会員であること(条件②)

  • 日本病院薬剤師会
  • 日本薬剤師会
  • 日本女性薬剤師会

この認定資格は日本病院薬剤師会が運営していますが、必ずしも日本病院薬剤師会に入っていなくてもいいということです。

指定学術団体(学会)への所属要件

(3)別に定める学会のいずれかの会員であること。

次の学会のどれかに入ってね、ということです。

  • 日本医療薬学会
  • 日本癌治療学会
  • 日本薬学会
  • 日本臨床腫瘍学会
  • 日本臨床薬理学会
  • 日本緩和医療学会
  • 日本癌学会
  • 日本緩和医療薬学会
  • 日本臨床腫瘍薬学会

(2)の条件は、職能団体としての薬剤師会への所属要件、今回は学術団体としての学会の所属要件になります。
一緒に書けばいいやん、って思うところですが、職能団体と学術団体は実は似て非なり、なんです。

あらかじめ持ってないといけない認定

(4)日病薬病院薬学認定薬剤師であること。ただし、日本医療薬学会の専門薬剤師制度 により認定された専門薬剤師であればこれを満たす。

本当に変わった表現方法ですよね。普通に我々がこう言う書き方したら、分かりにくいと怒られそうな文章です。

たった1つの条件:日病薬病院薬学認定薬剤師であること。

これだけです。
本当はこれだけなんですけど、例外があります。

例外:日本医療薬学会の○○専門薬剤師

日本医療薬学会の専門薬剤師制度により認定された専門薬剤師と表現されていますが、2020年に改定・新設された「医療薬学専門薬剤師」「がん専門薬剤師」「薬物療法専門薬剤師」「地域薬学ケア専門薬剤師」のどれかになっている人(これからなる人は当然アカンです)なら、日病薬病院薬学認定薬剤師なくてもいい、という例外です。

参考記事(その1)


参考記事(その2)


参考記事(その3)


認定薬剤師取る要件に専門薬剤師が求められる、的な様相になってきました。

G01が生かせるラストチャンス

さらにさらにラストチャーンスッ!!
この項目には以下の付則がついています。

ただし、令和3年度までに認定申請するものにあっては(4)は従前の認定申請資格(日本病院薬剤師会生涯研修履修認定薬剤師、薬剤師認定制度認証機構により認証された生涯研修認定制度、日本臨床薬理学会認定薬剤師)で差し支えない。

令和2年、令和3年に申請する人は他の認定制度による認定薬剤師でも申請可能とするといっているのです。つまり今年、来年は日本薬剤師研修センターの研修認定薬剤師(G01)で申請できる最後の機会(まさにラストチャンス!!)となります。

他の記事でも繰り返しお伝えしてきていますが、病院薬学認定薬剤師は取得に最低3年かかるので最短の申請でも3年後以降になる新人の病院薬剤師さんは迷わず病院薬学認定薬剤師取得を目指しましょう。途中でやめることはいくらでもできます。

少し話がそれましたが元に戻しましょう。

所属施設の限定と年限の指定

(5)申請時において、病院または診療所に勤務し、がん薬物療法に3年以上、かつ、申請時に引き続いて1年以上従事していること(所属長の証明が必要)。

これなかなかわかりづらいところです。
具体的には3つの条件が示されています。
全て合致する必要があります。

申請時に病院または診療所に勤務

→ いわゆる病院薬剤師じゃないとだめってやつです。(条件①)ここで、保険薬局勤務薬剤師が排除されてしまいます。

がん薬物療法に3年以上、かつ、申請時に引き続いて1年以上従事していること

→ (これまでに)がん薬物療法に(合算して)3年以上関わっていること(条件②)
→ かつ、直近1年(1年前~今現在もなお)がん薬物療法にかかわっていること(条件③)

申請時に・・・かつ、申請時に・・・
ってあるので、この「かつ」で前後文節を区切ってしまいがちですが、そこではないんですね。

研修施設における一定期間の研修

(6)日本病院薬剤師会が認定する研修施設(以下「研修施設」という。)において日本病院薬剤師会が別に定める実施要綱・コアカリキュラムに基づく実技研修を3ヶ月以上履修していること、または、研修施設において3年以上、がん薬物療法に従事していること(所属長の証明が必要)。

まず、「研修施設」というは、日本病院薬剤師会が研修施設として認めた病院のことで、勝手に名乗れるわけではありません。
2020年6月現在、この研修施設はここで確認できます(内容は2019年度のものです)。
http://www.jshp.or.jp/cont/18/0524-3-3.pdf

ここ重要ポイントです。
ここで示されている条件は「2通り」で「いずれか」を満たせばOKです。

条件①自分の勤務する病院が「研修施設」ではない場合

日本病院薬剤師会が別に定める実施要綱・コアカリキュラムに基づく実技研修を3ヶ月以上履修
→ がん薬物療法認定薬剤師研修という実技研修を受ける

3ヶ月以上と書かれていますが、ここ数年の募集要項見てると実質は2か月半程度になってます。
とはいえ、この期間は勤務できないわけですから、送り出してくれるかどうかは自施設の理解次第です。

条件②自分の勤務する病院が「研修施設」の場合

→ その施設で3年間以上がん薬物療法に従事する

もっとざっくり言ってしまえば3年間そこにいることです。何をもって従事するといえるのか、とか、そういう議論はここではしません。
(業務としてかかわっていない方が、経験ないままで特定の領域で認定取得を目指すのはちょっとないかなと思いますので)

研修単位の取得:これがただただややこしい

(7)日本病院薬剤師会が認定するがん領域の講習会、及び別に定める学会が主催するがん領域の講習会などを所定の単位(40時間、20単位以上)履修していること。 ただし、40時間のうち日本病院薬剤師会主催のがん専門薬剤師に関する講習会 12時間、6単位以上を取得すること。

条件としては2つが求められています。
記載の順を逆にして説明します。

条件①:必須単位の明示

日本病院薬剤師会主催のがん専門薬剤師に関する講習会 12時間、6単位以上を取得すること。

これは、日本医療薬学会と共催で実施している「がん専門薬剤師集中講義」のことを指します。この講義を最低1回必ず受けてね、と言うことです。

過去の受講資料を確認しましたら、1回の受講=2日間で6.5単位付与されていました。受講証書には単位数が記載されてないのが、また、めんどいです。

条件②:その他の認定研修および合計取得単位数

日本病院薬剤師会が認定するがん領域の講習会、及び別に定める学会が主催するがん領域の講習会などを所定の単位(40時間、20単位以上)履修していること

「日本病院薬剤師会が認定するがん領域の講習会」の言い換えとして、「以下が主催する講習会」と注釈が入っていて、以下というのは

  • 日本病院薬剤師会
  • 日本病院薬剤師会が実施するeラーニング
  • 各都道府県病院薬剤師会(ブロック開催も含む)

のことだそうです。
これ本当に分かりづらいです。
最初の日本病院薬剤師会が主催する講習会、というのは条件①のものだけです。なので、ここでは省略。

次のeラーニングは、主催者ではないと思いますが(笑)唯一、ピンポイントで分かりやすい表記になっています。
しかしここにも注意が必要で、eラーニングの全ての講義が対象になるわけではなく、(がん薬物療法認定薬剤師申請の対象としては)実際には数える程度しかありません。権利関係上の問題もあるようです。

講習会が具体的に明示されていればいいのですが、そういうリスト、とくに網羅された開催「予定」のリストというのは示されていないので、予定が立てにくい、と言うのがあります。

この講習会はここに入っているのかな?と不安がよぎります。

また、都道府県病薬が主催する講習会については、地域ごとに実施方法や取り扱いに随分と違いがあるようで、情報を網羅するのはすみません、できませんでした。

一方で、「別に定める学会が主催するがん領域の講習会」の方は、多少選択肢が増えます。「別に定める学会」と言うのは(4)と同じで、以下の9つです。

  • 日本医療薬学会
  • 日本癌治療学会
  • 日本薬学会
  • 日本臨床腫瘍学会
  • 日本臨床薬理学会
  • 日本緩和医療学会
  • 日本癌学会
  • 日本緩和医療薬学会
  • 日本臨床腫瘍薬学会

注意事項としては「主催するがん領域の講習会」は、学術大会とは違うと言うことです。「教育セミナー」とか、「〇〇講習会」と言った名称で、開催されているものです。特に、最後の日本臨床腫瘍薬学会、巷ではJASPO(じゃすぽ)と言われている学会ですが、この学会は対象となるセミナーが多いです。ただ、セミナーの名前から内容を想像できないものがあるので、行ってみたらずいぶん違ったということの無いように事前チェックをお忘れなく。

また、ときとして、学術大会のプログラムの一環で行われるシポジウム等がこの「講習会」として認定されることがあります。入退場のチェックがあったり、成果報告書の提出が義務付けられているものは多くの場合、対象になります。ただし、この入退場のチェック(スタンプ押印のことが多いです)をちゃんと受けていないと単位として認めてもらえません。
単位対象になる場合は、各学術大会のホームページにそのことが掲載されているので、こちらもあらかじめチェックです。

恐らく最大の難関:50症例の提出

(8)がん患者への薬剤管理指導の実績50症例以上(複数の癌種)を満たしていること。

症例数については、はっきりと書かれている通りです。
ここで重要なことは、ふつう、症例というのは、患者さん1人のことを指します。

過去には、一人の患者の時期の離れた内容の異なるエピソードは別症例扱いにしてもいいよ(個別に判断する)という解釈のQ&Aが出ていたような気がするのですが、今はその記述がありません。

例えば、5年前に発症し、初回治療として術前化学療法を実施したときのエピソードと、術後3年半経過して、1年前に不幸にも再発してしまった際の化学療法のエピソードを、どう扱うのか?といった具合です。

これを実際に別症例として書いて、審査時に気づく(そして指摘する)確率を考えると、必ずしも高くはないと思いますが、Q&Aから消えた、ということはそういうことだと考えていたほうがいいと思います。
(この一見して玉虫色の表現から何が読み取れるかは結構重要かもしれませんよ)

施設長の推薦が必要

(9)病院長あるいは施設長等の推薦があること。

あなたが職場に対して普通の貢献をしていれば推薦はいただけるはずです。認定を取らせたくないと考えている管理者はいないと思いますので。
もし、上記8つの条件を満たしていながら病院長・施設長の推薦をいただけないのだとしたら、ほかの問題を先に解決する必要がありそうです。

申請前に試験を合格していること

(10)日本病院薬剤師会が行うがん薬物療法認定薬剤師認定試験に合格していること。

あっさり書いてありますが、ここ重要です。
認定の申請より前に、試験に合格していることが必要、という意味です。

多くの認定制度は、申請を受け付けてから、最後の関門的に試験を実施しますが、日本病院薬剤師会の○○認定薬剤師、○○専門薬剤師は、申請よりも先に試験を合格する必要があります。

別の見方をすれば、正直、誰でも試験を受けることはできます。

ただし、試験に受かったこと(=合格通知)には有効期間があり、ここ最近では「受かったその年の申請」と「翌年の申請」の2回だけになります。
合格当年に申請したが、他の要件(多くの場合は50症例の質が悪いと判定されることが多いようですが)で、認定されなかった場合、その合格通知は次(翌年)の申請でも有効です。
1回使わなかったから、その翌年に使えるとかいうことはありません。「その年」か「翌年」だけです。

「1年間有効」といった表現をされるときもありますが、上記のような意味です。


まとめ

なぜか難しく書かれているような申請条件ですが、決して申請されることを望んでいないわけではありません。条件の本質を早く理解して、申請に向けた準備に力を注げるといいですね。

この記事の執筆者

なりゆき専門薬剤師(諸般事情により匿名)
現役の病院薬剤師(勤務歴20年)
複数の認定薬剤師・専門薬剤師を取得、活動歴あり