がん専門薬剤師制度の改訂:研修施設の要件が実質緩和へ

がん専門薬剤師 専門薬剤師

日本医療薬学会の専門薬剤師制度の改訂により、がん専門薬剤師の研修施設に関する要件も変更がありました。
実質的には要件が緩和されるので、長期的にみると以前よりも取得しやすくなるかもしれません。

日本医療薬学会は専門薬剤師制度の骨組みを統一化へ

先日、地域薬学ケア専門薬剤師制度に関する記事を投稿しました。
同じくして、すでに広く認知されているがん専門薬剤師の制度についても変更された規程と細則が公表されています。

がん専門薬剤師制度は新たに発足する制度ではないので、認定要件の大幅緩和はなく、むしろ学会発表、論文発表要項が追加され、ハードルが上がったようにも思います。

その中で、今後がん専門薬剤師を目指そうとしている人にはやや朗報です。
研修施設に関する規定が変わるため、これまでよりも多くの研修施設ができる可能性があります。

旧制度は 指導薬剤師1名 or 専門薬剤師2名

これまでのルール(旧規程)を確認してみましょう

第6条 一部抜粋
がん専門薬剤師研修施設とは、一定水準以上のがん領域の診療実績・体制を有し、 且つ薬剤師によるがん薬物療法への積極的貢献があり、がん専門薬剤師を養成するための 体制が整備されていると認められた施設をいう。
2 がん専門薬剤師研修施設は、以下の資格をすべて具備していることを要する。
(1)本学会がん指導薬剤師あるいは本学会認定指導薬剤師1名以上の常勤
(2)・・・以下省略

この(1)を満たすのがなかなかの関門でした。人数が少ないうえ、当然の現実問題として指導薬剤師は一部の施設に偏在する状況でしたので、研修施設が多く認定できない状況でした。

でも、あれ???ウチの病院、指導薬剤師いないけど研修施設になってる
という人がいるはずです。

これは、研修施設を増やすための苦肉の策・・・ではないのでしょうが、上記(1)にオマケの策を追加しました。

細則第5条 一部抜粋
3 日本医療薬学会がん指導薬剤師および日本医療薬学会認定指導薬剤師ともに不在の施設は、 日本医療薬学会がん専門薬剤師2名以上の常勤を満たせば研修施設に準ずる施設として認定することができる。

指導薬剤師がいなくても、研修施設になれる道を作りました。
これにより、一応、研修施設数は増えました。

が、これでは、指導薬剤師って必要ないよね?ってなります。

そこに今回の専門薬剤師制度改革が追い風?になります。

薬物療法専門薬剤師

地域薬学ケア専門薬剤師
との
制度骨格の統一化が図られてことにより、研修施設が「基幹施設」と「連携施設」に区分されることになりました。

新制度では 指導薬剤師=基幹施設、専門薬剤師=連携施設

この区分が盛り込まれた、新しい既定を確認してみましょう。

第6条
「がん専門薬剤師研修施設」とは、一定水準以上のがん領域の診療実績・体制を有し、かつ 薬剤師によるがん薬物療法への積極的貢献があり、「がん専門薬剤師」を養成するための体制 が整備されていると認められた施設をいう。「がん専門薬剤師研修施設」は、「がん専門薬剤師 研修施設(基幹施設)」、「がん専門薬剤師研修施設(連携施設)」の2つがある。
2 「がん専門薬剤師研修施設(基幹施設)」は、以下の要件をすべて具備していることを要する。 ただし、基幹施設単独で運営する場合、(2)は適用しない。
(1)本学会の「がん指導薬剤師」、「薬物療法指導薬剤師」、「医療薬学指導薬剤師」、「地域薬学ケ ア指導薬剤師」のいずれか1名以上が常勤として勤務していること。
(2)連携施設で研修を行う薬剤師に対して、研修ガイドラインに沿った継続的な指導を実施し ていること。
(3)・・・

途中省略

3 「がん専門薬剤師研修施設(連携施設)」は、以下の要件をすべて具備していることを要する。
(1)本学会の「がん専門薬剤師」または日本病院薬剤師会が認定する「がん薬物療法認定薬剤師」 のいずれか1名以上が常勤として勤務していること。
(2)基幹施設に所属する本学会の「がん指導薬剤師」、「薬物療法指導薬剤師」、「医療薬学指導薬剤師」、「地域薬学ケア指導薬剤師」のいずれかによる研修ガイドラインに沿った継続的な指導の受入ができる体制を有していること。または、基幹施設での研修に参加できる体制を有していること。

改めて、ここで皆さんに伝えたい要点を簡単にまとめると

  • 研修施設は「基幹施設」と「連携施設」に分かれる
  • 「基幹施設」には○○指導薬剤師が1人必要
  • 「連携施設」には、がん専門薬剤師かがん薬物療法認定薬剤師が1人必要
  • 「基幹施設」と「連携施設」が連携して研修を受ける薬剤師の指導を行う

ということになります。

指導をするのは指導薬剤師である

今までと大きく変わったことは、

指導をするのは指導薬剤師である

ことが、明確に示されているということです。
がん専門薬剤師やがん薬物療法認定薬剤師は、あくまで連携施設の精度保証(質の担保)としての役割であり、指導者ではない、ということです。

これにより、初めのほうに書いた、指導薬剤師って必要ないよね?ってことはもうなくなります。

指導薬剤師がいなければ指導できないということですから。

しかも、指導薬剤師はがん指導薬剤師でなくてもいいので、研修施設の幅は大きく広がる可能性があります。

インセンティブ(費用負担)として具体的な金額が明示

一方で、ネックとなりそうなこともあります。

連携施設は、連携施設となるために、連携費用を負担しなければならないことになりました。
この連携に係る負担金は研修者1人✕1年あたり42,000円で、このうち30,000円が基幹施設の収入となります。
つまり、連携施設に5年勤務していただけで申請資格を得ることはできなくなります。

指導は指導薬剤師が行う

という、原理原則からすれば、指導を受けるための授業料ということになろうかと思いますが、当然施設は支出を嫌います。
病院管理者を説得できるかどうかが重要になってきます。

なお、研修施設の研修者受け入れに関しては、費用の取り決めはなく、実際に他の施設勤務者を、研修として受け入れている施設の多くは、それなりの研修費用を徴収しているようです。連携施設がマイナスにならないようにはできそうです。

2024年の新規認定申請まではほぼ旧既定で対応可

ちなみに、この新規定は今年度ではなく、来年度からの施行となります。
また、2024年までに新たにがん専門薬剤師の認定申請を行う場合については、過渡的措置が別に定められてますので、改めて紹介できればと思います。

旧規程とその過渡的措置のある2024年までに、何としても勝負を決するか、もう少し長期スパンで新規程での新規認定を目指すか、目標を定めておく必要がありそうです。

このような規則やルールの理解は、小難しいことが多くありますが、こうしたルールの理解が、制度攻略への近道ですので、ぜひ原文もご参照下さい。
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この記事の執筆者

なりゆき専門薬剤師(諸般事情により匿名)
現役の病院薬剤師(勤務歴20年)
複数の認定薬剤師・専門薬剤師を取得、活動歴あり