専門薬剤師は認定薬剤師より偉いの?どこがちがうの?

専門薬剤師 認定薬剤師(基礎) 認定薬剤師(領域)

認定薬剤師と専門薬剤師の相違点を理解する

結論

専門薬剤師の方が偉いと言うことはない。専門薬剤師には必ず試験があり、人数が少ないと言う点で希少性はある。

この記事の要点

  • もともとは、名前の違い程度であった。
  • 認定薬剤師よりも専門薬剤師が上位のように言われるのは、看護師の認定・専門制度と日本病院薬剤師会の制度の影響と考えられる。
  • 各認定制度の改正によって専門薬剤師のほうが、取得のハードルが上がってきている傾向はある
  • 認定者数を合計すれば、専門薬剤師<<認定薬剤師 なので専門薬剤師は希少な存在ではある
  • 日本緩和医療薬学会は、2020年に従来の認定薬剤師の上位資格として専門薬剤師(と指導薬剤師)を設定した

認定薬剤師と専門薬剤師:違うのは名前だけ?

そもそも、なぜ「認定」と「専門」があるのかという疑問が湧いてきますが、それぞれに歴史的経緯があります。

先にできたのは認定薬剤師

薬剤師の世界では、有名な日本薬剤師研修センターの「研修認定薬剤師」が最初なのではないかと思います(裏とってません)。
日本薬剤師研修センターの設立が平成元年ですので、30年の歴史と言えます。
当時、何が理由かはわかりませんが、薬剤師が勉強できない、あるいはしないことが問題提起されて生涯教育制度が検討されできたものだったと思います(こちらも裏とってません)。

なりゆき薬科大学では「スタンプラリー」とか「ポイントラリー」と表現している認定制度です。
いつも書いてますが、決して悪意ではありません。

専門薬剤師が後発

一方で、専門薬剤師ができたのは2005年(か2006年)に日本病院薬剤師会が「がん専門薬剤師」を認定したのが最初ですので、歴史としては半分の15年程度です。
医師の「専門医制度」をモデルに、薬剤師にも特定領域で高レベル水準の「専門薬剤師」を作ろう、という流れから作られました。
なので「専門薬剤師」という呼称になったのでしょう。

いずれも「薬剤師の歴史」と比べれば、かなり浅いのですが、認定薬剤師と専門薬剤師では、最初の発足の背景と歴史に違いがあるわけです。

この時点では認定薬剤師と専門薬剤師は、全くの別物です。
しかし、この専門薬剤師を認定する段で、1つの要件が設定されました。

がん専門薬剤師認定要件の一部を今の記載で転載します。

「日本薬剤師研修センター研修認定薬剤師」、「日本病院薬剤師会日病薬病院薬学認定薬剤師」、 「日本薬剤師会生涯学習支援システム(JPALS)クリニカルラダー5以上」、いずれかの認定を受けていること。

つまり、こういうことです。

認定薬剤師を取得していないと専門薬剤師は取得できない

これが、なんとなく 認定薬剤師<専門薬剤師 と思われてしまう最初の要因です。

日本病院薬剤師会の制度も大きな影響

つぎに、日本病院薬剤師会の制度が影響しています。

日本病院薬剤師会の制度は、もともと「専門薬剤師」の制度しかありませんでした。
しかし、ちょっとハードルが高すぎたのか、取得できる人が少なく、結果目指す人も少なくなってきてしまいました。そこで、「専門薬剤師」の下位資格として、取得のハードルを下げた「認定薬剤師」を創設しました。

こうして日本病院薬剤師会の制度では 認定薬剤師<<専門薬剤師 の2段階制となりました。実質的な違いは、取得のハードル(要件)だけです。取得後に何ができて何ができないといったことは、何一つありません。
ただし、ハードルを下げたことで「自分も取れる!」と思った人は増えたようです。実際に認定薬剤師の申請者数は専門薬剤師しかなかったときよりもずっと増えて、現在に至っています。

ただ、ここで少しおかしなこと起こります。
日本病院薬剤師会の認定薬剤師の認定要件は、専門薬剤師の認定要件の一部をそのまま引き継いでいるのですが、その一つがこちらです。

「日本薬剤師研修センター研修認定薬剤師」、「日本病院薬剤師会日病薬病院薬学認定薬剤師」、 「日本薬剤師会生涯学習支援システム(JPALS)クリニカルラダー5以上」、いずれかの認定を受けていること。

これは、つまり

認定薬剤師を取得するために認定薬剤師を取得していないといけない

ということです。ちょっと何言ってるのかわかりませんよね。
言い換えると、認定薬剤師の中で、上下関係ができたということなのです。

認定期間のことなる制度間の比較はあまり意味がなさそう

一方で、認定する組織(学会や団体)を跨いでの制度比較というのはあまり意味がないように思います。

例えば、日本病院薬剤師会の「がん薬物療法認定薬剤師」と日本医療薬学会の「がん専門薬剤師」は、どちらが上か?というようなことは、あまり意味がなくて、どちらが上ということはありません。

「がん専門薬剤師のほうが上」と主張される方が、ときどきいらっしゃいますが、がん専門薬剤師のほうが高いハードルになっているのは、研修施設での研修期間くらいです。ただし、その研修施設になるための要件は、がん薬物療法認定薬剤師のほうがずっと厳しく、長さだけで測れないものはあるだろうなと思います。

こういった経緯から、認定薬剤師と専門薬剤師の関係性は、ざっくりこんな感じかなと思います。

(一部の)認定薬剤師<<(一部の)認定薬剤師 ≦ 専門薬剤師

とはいえ、どちらが上か下かなんて、あまり気にするようなことではありませんね。

日本緩和医療薬学会は3段階の新制度へ

認定薬剤師と専門薬剤師については新たな動きもあります。
日本緩和医療薬学会は、従来の認定薬剤師の上位認定として専門薬剤師と指導薬剤師の制度を追加することを公表しています。

なりゆき薬科大学にも関連記事があります。

こちらのケースは日本病院薬剤師会が、専門薬剤師の下位に認定薬剤師を創設したのとは逆のパターンですね。

この制度がどのように成熟していくかたいへん興味深いですね。

まとめ

専門薬剤師と認定薬剤師が名称で混乱してしまうのは、認定薬剤師の幅が広すぎることが理由
認定薬剤師を一括り(ひとくくり)にせず、それぞれの制度(認定要件)を確認して吟味することが大切


この記事の執筆者

なりゆき専門薬剤師(諸般事情により匿名)
現役の病院薬剤師(勤務歴20年)
複数の認定薬剤師・専門薬剤師を取得、活動歴あり650988184441234″ async src=”https://pagead2.googlesyndication.com/pagead/js/adsbygoogle.js”>