感染制御認定薬剤師の申請要件変更で見落としがちな重要ポイント(2020年改訂)
感染制御認定薬剤師の申請要件にも大きな変化が!
感染制御認定薬剤師の申請要件で地味だけれども、重要な変更がありました。
気づかずにスルーしてしまう人も多いかと思いますので、改めて解説します。また、その変更した意図についても考察します。
2020年度は認定薬剤師の認定要件改革年!?
すでに何度か取り上げているとおり、2020年は認定薬剤師&専門薬剤師の認定要件が大きく変化する年になります・・・というかなりました。
これは、新型コロナウイルスとは全く関係なく、以前から決まっていたもので、どうしてこんなに重なるのかというと、薬機法の改正や診療報酬の・調剤報酬の改定とも無関係ではないからです。
お察しいただいている人も多いのではないかと思います。
これまでも、具体的な例として
日本医療薬学会のがん専門薬剤師や薬物療法専門薬剤師ではハードルが上がった?こと
がん専門薬剤師・薬物療法専門薬剤師の要件変更 2020 | なりゆき薬科大学
今回はがん専門薬剤師・薬物療法専門薬剤師の制度が変更され、認定要件(取得に必要な条件)も変更となリ、ちょっとだけ取得のハードルがあがったのではないかと思います。
日本病院薬剤師会の○○認定薬剤師に求められる実務経験が5年から3年に短縮されたこと
日本病院薬剤師会○○認定薬剤師の実務経験要件が3年に短縮 | なりゆき薬科大学
日本病院薬剤師会が認定する認定薬剤師の認定要件が変更になり、認定するまでに必要な実務経験が5年から3年に短縮されました。
などを取り上げてきましたし、
この分かりにくい、申請条件をがん薬物療法認定薬剤師を例にとって解説しました。
認定薬剤師の申請条件が何を言っているのかよくわからない方への解説【長文】
先日、認定薬剤師取得に関する相談を受けたのですが、申請条件が正直よくわからないといわれました。そこで、「がん薬物療法認定薬剤師申請条件」を例として、わかりやすく何が書いてあるのかを解説します。
この日本病院薬剤師会の○○認定薬剤師は、○○部分の専門領域に関する事項(主に研修等に関する条件)が異なります。
感染制御認定薬剤師でも変更がありましたが、気づいていないという方も多いようです。
この記事では、その変更点を解説します。
新たな申請要件
なお、申請要件の原文はこちらで確認できます。
最初に、念のため全文をお示しします。
(2)薬剤師としての実務経験を3年以上有し、日本病院薬剤師会の会員であること。ただし、別に定める団体のいずれかの会員であればこれを満たす。
(3)別に定める学会のいずれかの会員であること。
(4)日病薬病院薬学認定薬剤師であること。ただし、日本医療薬学会の専門薬剤師制度により認定された専門薬剤師であればこれを満たす。
(5)申請時において、病院または診療所に勤務し、3年以上、かつ、申請時に引き続いて1年以上施設内において、感染制御活動(院内感染防止対策委員会、院内感染対、策チーム、抗菌薬適正使用支援チーム(以下、委員会・チーム)の一員、委員会・チームと連携した活動、あるいは他施設の委員会・チームと連携した活動など)に従事していること(所属長の証明が必要)。
(6)施設内において、感染制御に貢献した業務内容及び薬剤師としての薬学的介入により実施した対策の内容を20例以上報告できること。
(7)日本病院薬剤師会が認定する感染制御領域の講習会、及び別に定める学会が主催する感染制御領域の講習会などを所定の単位(20時間、10単位)以上履修していること。ただし、日本病院薬剤師会主催の感染制御に関する講習会を1回以上受講していること。
(8)病院長あるいは施設長等の推薦があること。
(9)日本病院薬剤師会が行う感染制御認定薬剤師認定試験に合格していること。
この中で、(1)(3)(6)(7)(8)(9)は、今回の改訂で変わらなかったところで、かつ、他の○○認定薬剤師の申請条件と同じです。
(2)(4)は、今回の改訂で変更された箇所ですが、他の○○認定薬剤師と共通の項目です。具体的には・・・
(2)が実務経験と所属団体に関する要件で、実務経験年数が5年から3年に短縮されたことを示す元の文章です。
(4)は基礎となる認定薬剤師の取得についての記述です。
ということで、今回の主役は(5)になります。
今回の主役は(5)
比較のため、これまでの申請条件と並べてお示しします。
申請時において、引き続いて3年以上、施設内の感染対策委員会または院内感染対策チームの一員(院内感染対策チームと連携しての活動を含む)として感染制御活 動に従事していること(所属長の証明が必要)。
これが、こうなりました。
(5)申請時において、病院または診療所に勤務し、3年以上、かつ、申請時に引き続いて1年以上施設内において、感染制御活動(院内感染防止対策委員会、院内感染対、策チーム、抗菌薬適正使用支援チーム(以下、委員会・チーム)の一員、委員会・チームと連携した活動、あるいは他施設の委員会・チームと連携した活動など)に従事していること(所属長の証明が必要)。
分かりにくいですね。
いろいろ書いてあるけど「ICTかASTに入ってないとだめなんでしょ?」と思われた方もいらっしゃるのではないでしょうか。
新要件では、ICT/ASTへの所属義務がなくなっている
でも、今回の改定でこの記述は「ICTとかASTに入ってる必要はない」に書いてあることが変わったんです。
両方の文章から(カッコ)の記述を抜くとわかります。
申請時において、引き続いて3年以上、施設内の感染対策委員会または院内感染対策チームの一員として感染制御活動に従事していること。
旧要件では、確かに「感染対策委員会か院内感染対策チームの一員」であることが求められています。
しかし、新要件では、こうした書き方はしていません。
申請時において、病院または診療所に勤務し、3年以上、かつ、申請時に引き続いて1年以上施設内において、感染制御活動に従事していること。
組織への所属は問わないので、感染制御活動に従事しているという実態だけが求められるようになりました。
なので、ICTのメンバーかどうか、や、ASTのメンバーかどうか、はこの際どうでもいいということになったわけです。
そのかわり、いま、現在進行形で従事していることが求められました。過去にやっていただけではだめ、ということです。
この記述自体は、他の○○認定薬剤師でもあるので、足並みをそろえた部分だろうと思います。
いずれも、施設長の証明が必要ですので、病院側が「No」といえばむろんダメなのですが、こういった認定を申請しようとしている人が、病院から「No」を言われるようなことがあるならば、早急に人生について見直したほうがいいと思います。
ICT/AST 所属条件の事実上撤廃についての考察
求めているものは従来と変わらない
さて、今回の変更ですが、恐らく書きぶりを変えただけで、日本病院薬剤師会としては新たに条件を設定したというわけではないのではないかと思います。
以下、筆者の個人的考察です。
旧要件には(カッコ)内で、「院内感染対策チームと連携しての活動を含む」と記述されており、ここで委員会やチームの所属が必須ではないことを示しています。
しかし、(カッコ)の外と内で、どちらが意味としてパワーがあるかといえば、当然外側なので、委員会やチームの一員か?ということにフォーカスが向かいます。
証明する側(施設長/病院)の理解を得やすく
これの証明を求められる施設長(病院)としては、そのあたりの裏事情的なものを知る由もないので、虚偽の証明はできないと真面目に申請予定者が本当に一員であったかどうかで、その証明(書類の押印)の可否を見めることになります。
つまり、この要件を素直な心で正直に読み取った方々が、そもそもの申請を遠慮してしまったり、従事状況を証明する施設長が遠慮してしまったりしていたことが考えられます。
理由を考察すると重要な変更に見えてくる
それは双方にとって、また、社会にとって、市民にとって損失になりかねません。
認定を与えるべき人に与えられるような今回の変更であったと、好意的に受け止めています。
実は、いまからでもまにあう
今年は、新型コロナウイルス感染の拡大によって、認定スケジュールが大きく変更されています。
また、今後も動向によっては再度の変更やあるいは中止になってしまうことも起こりえますが、例年ならこの6月に行われている試験が、11月頃に延期されています。申請もそのあとに予定されています。
認定要件に合致する方は、これもいい機会です。認定取得を前向きに考えてみてはいかがでしょうか。
この記事の執筆者
なりゆき専門薬剤師(諸般事情により匿名)
現役の病院薬剤師(勤務歴20年)
複数の認定薬剤師・専門薬剤師を取得、活動歴あり