アンサングシンデレラ第5話を見たアンサングな感想
2020/8/13 よる10:00~ フジテレビ系列で放送されたドラマ「アンサング・シンデレラ 病院薬剤師の処方箋」第5話を現役の病院薬剤師、それもおっさんがみて思ったことを発信します。
アンサング・シンデレラ 病院薬剤師の処方箋 – フジテレビ
アンサング・シンデレラ 病院薬剤師の処方箋 – オフィシャルサイト。2020年7月16日スタート。毎週木曜よる10時放送。出演:石原さとみ
普段は、このHPでこういった記事は掲載していませんが、このドラマは薬剤師にとって、それくらいのおおきなインパクトだということです。
第1回・第2回・第3回の放送を見た感想はそれぞれこちらです。
アンサングシンデレラ第1話を見た感想とアンサングな補足
初回は病院薬剤師を知らない人が、病院薬剤師ってこんな感じ、というのを基本情報として伝える役割を担ったであろう第1話。無事に任務完了されたと思います。医療従事者がない人には、病院薬剤部なんてただのブラックボックスでしかないと思いますので。
アンサングシンデレラ第2話を見たアンサングな感想
前回(#1)のあとは、ネット各所でいろいろと意見が飛び交いましたね。今回も薬剤師的な「あるある=リアル」な部分と、ドラマならではの「フィクション=やりすぎ」部分とが相混じっていました。ドラマってこれくらいなんだと思います。
アンサングシンデレラ第3話を見たアンサングな感想
今回も、薬剤師的なネタ満載でした。ニフェジピンCR錠の半錠調剤からの、小野塚さんの正体判明。小野塚さん勤務先のドラッグストアの勤務シフトの過酷さなど、薬剤師界隈の SNS でも盛り上がっていました(笑)
前回分(第4回)がありませんが、まだ見ていません(苦笑)
途中みてなくて、大丈夫なの?な心配もありましたが、そこはテレビです。前回の「フリ」部分はちゃんとまとめて冒頭にダイジェストしてくれていました。
この記事のもくじ
視聴率的にはちょっとイマイチなの?
て、第1回以来、視聴率は10%前後を推移していますが、インターネットの記事ではいろいろと煽りぎみにかかれている部分もあります。
視聴率ウォッチャーではないので、幅広くデータを調べるまではしませんでしたが、参考までに、「アンサングシンデレラ」の前シリーズ(このドラマも結構話題だったように思います)をみましたら、「アンサングシンデレラ」のほうが、推移のベースラインが高いようです。
どの相手と、という部分は大切ですが、比較するという視点は、客観性の保証という意味でやはり重要ですね。
本放送をリアルタイムで見れない薬剤師が多いってことが反映しているとかあるんでしょうか。もちろん真偽のほどはわかりませんが、要因の一つにはなってそうな気もします(個人の感想です)。
そういうリカバリー能力というかバックアップ情報収集は職業病的に身についているような気もしなくもありません(個人の感想です)。
薬剤師の皆さん、煽りにのってはだめですよ。
そして、自ら煽るのはもっとだめです。
第5話放送の感想:ここから本題
第4話は冒頭のダイジェストと、公式サイトのあらすじ全編で賄って、第5話を視聴しました。
いままで(私の見た第1話~第3話)は、複数エピソードが絡み合いつつ、進んでいくような展開で、スピード感が少し胃もたれするくらいでしたが、今回は、メインストーリーが1つに集約されていたので、少し落ち着いて考えながら見られたのではないでしょうか。
なんと、刈谷主任ががん薬物療法認定薬剤師だった件
ドライだけど、秘めた情熱のあるタイプ?な刈谷主任、なんと「がん薬物療法認定薬剤師」だったんですね。
原作にも、この資格をもった登場人物が出てくるというのを、何かでチラ見した記憶がありますが、まあ、だれが持ってるかはさておき、やはり驚きです。
しかも、「この病院では一人だけー!」と羽倉さんがいっていたので、(その理由はのちほど書きますが)病院としてがん診療に、それなりの重心を置いていることがうかがえます。
刈谷主任の調剤室での奮闘ぶりと、患者さんのベッドサイド業務をみどり(とくるみ)に任せていることから、自分の持ち患者はあまりいないようですよね。
辰川太一さんの治療方針について、主治医と意見交換する場面もあったので、把握はされていると思いますが、
認定更新の25症例、大丈夫かなあ~
そんな誤解をされている方はいらっしゃらないと思いますが、
がん薬物療法認定薬剤師「だから」抗がん剤のミキシングが「できる」わけではない
ということは付け加えておきます。
がん薬物療法認定薬剤師について
薬剤師さん向けに認定薬剤師と専門薬剤師について情報発信することがこのサイトの目的です。
くるみが喜々として、こういうの想像してましたーって、それなりの興味持った(そこまでではないというイマドキ感月でしたが)がん薬物療法認定薬剤師について、この機会に、ぜひお伝えを。
がん薬物療法認定薬剤師は日本病院薬剤師会が認定する資格
「がん薬物療法認定薬剤師」は、日本病院薬剤師会という団体が認定を行う資格です。
最初になるときは、病院薬剤師でないとなれません。
しかも、なるための条件が結構大変で、3か月間「研修施設」で研修を積まないといけません。
「研修施設」というのは、大学病院やがんセンターなどのような、幅広く、かつ、多くのがん患者さんの診療にあたっている病院で、実際には「なたはここで研修を受けてください」と、日本病院薬剤師会から指定されます。
こちらに、がん薬物療法認定薬剤師を具体的な例として認定条件に関する記事がありますので参考にしてください。
認定薬剤師の申請条件が何を言っているのかよくわからない方への解説【長文】
先日、認定薬剤師取得に関する相談を受けたのですが、申請条件が正直よくわからないといわれました。そこで、「がん薬物療法認定薬剤師申請条件」を例として、わかりやすく何が書いてあるのかを解説します。
3か月間の研修に参加するということは、その間、仕事は穴があきます(事実上の欠員状態)になるので、この研修への参加が認められる時点で、その後の活躍を病院は期待している、といえるわけです。
もちろん、これまでの放送や、画面から感じ取れる萬屋総合病院の規模からして、それなりのがん診療はあたりめのように展開しているだろうなと想像できますね。
がん薬物療法認定薬剤師は5年毎に更新
なお、がん薬物療法認定薬剤師は、一旦なったあとであれば、その後に保険薬局に転職したしても、がん薬物療法認定薬剤師であり続けることができます。
ただし、がん薬物療法認定薬剤師は薬剤師免許のように一度取れれば永久免許というものではなくて、5年ごとに「更新」が必要です。
運転免許のような感じですね。
うえのほうで、「刈谷主任、更新できるのか?」を勝手に心配していたのは、その条件が、まあまあ大変で、運転免許のように無事故無違反ならゴールド、とはいきません。
がん薬物療法認定薬剤師に限らず、認定薬剤師や専門薬剤師は取るまでも大変だけど取った後それを維持するのも大変、ということもあります。
認定する側として、専門性の質を保証するというのは、そういうことなんだと思います。
治験の話がここで絡んでくる

話をもどします。
辰川さんの治療が開始されて、「効果がありそう」という会話がある中で、悪役登場のような形で、七尾副部長さんが治験の適格条件合致の話をしてましたね。
この部分、おそらくはストーリーのピースとして、それから今後への布石として治験を少しネガティブな印象付けにしていたようです。
治験って、患者さんにメリットあります
ここは少し込み入った説明が必要になる部分なのですが、本当に端折って答えだけ書いてしまうと、今回の辰川さんのような状況で紹介される治験であれば、恩恵を感じることが多いように思います。
なので、七尾副部長の演技は、最高に上手な非日常だったかもしれませんね。
それは現在の治験の仕組みとして、無駄骨になるような試験プロトコールでは、厚労省やPMDAがOKださないと思いますので。
そんななかで、患者さんと家族のことを一番に考えて・・・というこのドラマのキーワードからみなさんが反対の立場をとった、そして実際に治験の提案はしなかった、という非常に開かれた民主的な現場だとわかりましたね。
流れた二人の涙と、こらえた一人の涙
医療者も、患者さんが亡くなったときにはいろいろと思いがあります。
私には、くるみの涙とみどりの涙は、ちょっと違う意味をもっているような印象を受けました。
感情を言葉にすれば、くやしい、とか、かなしい、とかなんでしょうけど。
振り返ってみて
自分が経験してきた職場でも、お医者さんが泣いてたり、看護師さんが泣いてたりすることもありました。
私自身の経験では、泣いた記憶はないですが、泣きそうになったことは何度かありましたね。
涙がこぼれたか、こらえたかはそれほど重要ではありません。
今週の復習
今回のネタ提供は3つです。
がん治療に関わっている病院薬剤師には、王道のところではありますが、だからこそ(とくに、アドバンス・ケア・プランニング〔Advance Care Planning〕)については、多くの人に知ってもらい、考えていただきたいものですね。
最近は、医療者側(多くはやはり医師から、ですが)からの説明がしっかりされるようになりつつありますが、辰川さん(息子さん)のように、昔の記憶や見聞きしてきた情報への(時に誤った)信頼(思い込み)は、なかなか取り除かれません。
最初にお孫さん(娘さん)が大きな役割を担いましたが、あんな娘さんを育てられたお父さんがすごいなと思いますね。
もう完全にクレーマーだった過去が上書きされています。
見逃し配信
配信は終了しました。
この記事の執筆者
なりゆき専門薬剤師(諸般事情により匿名)
現役の病院薬剤師(勤務歴20年)
複数の認定薬剤師・専門薬剤師を取得、活動歴あり
